相続財産の評価額の基準時は

遺産分割は、相続開始時(被相続人の死亡時)に存在した遺産を分配することであり、遺産分割の効果は相続開始時にさかのぼって生じますので、相続開始時の評価を遺産分割の基準とするのが相当といえるでしょう。

しかし、相続が開始すればすぐに遺産分割を行わなければならないという決まりはなく、相続開始から長い時間が経ってから遺産分割が行われることもよくあります。

そうなると、相続開始時の遺産の評価が上がったり、下がったり、あるいは価値がなくなったりするなど遺産分割時には大きく変わっている場合も十分考えられます。

そのような場合にまで相続開始時の評価を基準に遺産を分割すると不公平な結果を招くことにもなりかねません。

また、遺産分割の方法は、まず相続開始時に被相続人が有していた財産に特別受益分を加えたり、寄与分を差し引いたりして、相続人それぞれの具体的な相続分を算定し、次にその具体的な相続分の割合に応じて、現実の遺産分割をするという手順で行われます。

相続財産の評価の基準時についても、「個々の相続人の具体的相続分を算定する場面」と「具体的相続分に応じて現実に相続財産を分割する場面」との二段階に分けて行います。

「個々の相続人の具体的相続分を算定する場面」では、相続が開始されたときの評価を基準とし、「具体的相続分に応じて現実に相続財産を分割する場面」では、不公平な結果をさけるため、相続財産を分割するときを基準とするのが一般的です。

例えば、相続人が配偶者と子2人で相続財産が2,000万円、配偶者の特別受益が400万円の場合、配偶者の相続分は、みなし相続財産である2,400万円(2,000万円+400万円)の2分の1(配偶者の法定相続分)から特別受益の400万円を引いた800万円となります。

これが第一段階である「個々の相続人の具体的相続分を算定する場面」です。

それから数年後に遺産分割の話し合いが行われることになり、相続財産の中で不動産が値下がりした場合は、第二段階である「具体的相続分に応じて現実に相続財産を分割する場面」として、再度評価することになります。

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