遺言執行者の解任

民法1019条1項は、遺言執行者の解任事由として、「その任務を怠ったときその他正当な事由があるとき」としています。

「任務を怠ったとき」とは、遺言執行者が任務を放置し、実行しない場合のほか、相続財産を正当な理由なく相続人に引き渡さなかったり、遺言執行の報告を理由なく拒絶するなど、積極的に任務に違背する場合も含まれます。

逆に違背に当たらないとされたケースは、すべての遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言により、移転登記手続き及び財産の引き渡しが終了していて、遺言の執行をすべきものがない場合は、遺留分権利者から相続財産の目録の作成や管理状況の報告を求められた遺言執行者が、これをしないからといって任務に違背しているとはいえないとしています。

また相続財産の目録を作成するにあたって相続人の協力が得られないなどの事情があるときは、目録の作成が遺言執行者に就任してから半年後になり、その一部に欠陥があったとしても、任務を怠ったとはいえないとしています。

「正当な事由があるとき」とは、長期間にわたって遺言執行行為の障害となるような病気、行方不明、不在などのほか、遺言執行者が一部の相続人の利益に加担し、公正な遺言の実現ができない場合などがこれにあたるとされています。

遺言の解釈をめぐる争いは、解任事由にはならないとされています。

遺言執行者の解任手続きの管轄は、相続開始時の家庭裁判所とされ、申立人は、遺言の執行に法律上の利害を有するすべての人とされ、具体的には、「相続人(遺言によって認知された子を含む)」、「受遺者」、「共同遺言執行者」、「相続債権者」、「受遺者の債権者及び相続人の債権者」が含まれると解されています。

遺言執行者は、解任請求の申し立てがされただけでは、その地位を失ったり、職務を停止されることはありません。

しかし家庭裁判所は申し立てにより、解任の審判があるまで、遺言執行者の職務を停止したり、代行者を選任することができます。

解任の審判に対して、遺言執行者は即時抗告することができ、解任の申し立てを却下する審判に対しては、利害関係人が即時抗告することができます。

遺言執行者は、解任の審判が確定したときにその地位を失います。

解任された遺言執行者であっても、相続人や受遺者などに対する報告義務があり、これを怠ったために相続人などが損害を負った場合は、損害賠償責任が生じます。

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