離婚の基礎知識


目次

協議離婚とは

協議離婚とは、夫婦が話し合いによって合意して離婚する方法で特別な費用や面倒な手続きも必要なく、どんな理由でもお互いが納得すれば離婚できるので、最も簡単な離婚方法です。

しかし協議の内容や履行についてきちんと取り決めしていないと、後からトラブルになる可能性があります。

日本では離婚全体の約90%が協議離婚によります。

協議離婚の中には、夫婦の話し合いではどうしようもなく、知人や弁護士などの第三者が仲介して離婚を決めたケースも含まれます。

協議離婚のメリット・デメリット

メリット

  • 理由を問わず離婚できる
  • 話し合いの日時・場所・方法を自由に決められる
  • 費用がかからない
  • 第三者に知られることなく進めることができる
  • 合意すれば、すぐ離婚できる
  • 慰謝料や財産分与が相場より高額になる可能性がある

デメリット

  • 感情的になり、揉めやすい
  • 結論を急ぎすぎることがある
  • 法律的な知識が欠けている場合、正当な権利を主張できないことがある
  • 話し合いの詰めが甘いと取り決めがあいまいになる
  • 離婚公正証書を作成していない場合、金銭の支払いがされないことがある

協議離婚の進め方

離婚の意思表示

離婚したいという意思を相手にはっきりと伝えます。離婚の理由については愚痴や不満を言うだけでなく、説得力のある内容を準備しておくとよいでしょう。

慰謝料の請求

相手から精神的苦痛を受けていたら、慰謝料の請求ができます。請求できるかどうか、請求できるとしたらいくらが妥当かを決めておきます。

親権者の決定

未成年の子どもがいる場合、親権者を決めないと離婚できません。

養育費の決定

たとえ親権者にならなくても養育費は負担しなければなりません。金額が金額が決まらなければ養育費算定表を参考にしてみてください。

面会交流の方法

別れて暮らす親にも子どもに合う権利があります。月に何回会うのか、どのように会うのかを決めます。

不当な取り決め

たとえ夫婦間で合意したとしても、交換条件や脅迫まがいの行為は法律的に認められません。次のような取り決めは無効となります。

  • 財産分与の権利を放棄するなら、離婚届に署名押印する
  • 親権者変更の申し立てを一切しない
  • 親権を放棄するなら、養育費の請求はしない
  • 養育費はいらないから、子どもには会わせない
  • 離婚後は旧姓に戻し、婚姻中の姓を使わない
  • 支払いが遅れた場合、ペナルティーとして金銭を支払う

協議離婚の注意点

  • 協議離婚は、夫婦の話し合いがまとまれば簡単に離婚できますが、その反面、取り決めがおろそかになりがちです。離婚の前にきちんと話し合っておかないと、離婚後にトラブルへと発展することがありますので、準備を整えて行うことが大切です。
  • まず、話し合うことや主張するべきことをリストアップし、証拠や情報の収集、法律の確認も行います。事前に法律や離婚に詳しい専門家などに相談しておくのもよいでしょう。
  • 実際に話し合うときは、どんなことでも記録するように心がけてください。メモを取ったり、ボイスレコーダーで録音するとよいでしょう。後から言った言わないと揉めたときに事実を証明できるものとして役立ちます。
  • 相手と面と向かって話したくなかったり、言い争いになるおそれがあるときは、文書やメールのやりとりでも構いません。文書の場合はコピーをとっておき、重要な内容を伝えるときには、内容証明郵便にしておくと安心です。メールの場合はやりとりを保存しておいてください。
  • 協議離婚では、離婚後の取り決めの不履行というトラブルが多いものです。離婚したら相手から無視されたり、急に連絡が取れなくなったりすることが少なくありません。これを防ぐには、協議で合意したことを文書にしておくことが大切です。
  • 離婚届を提出する前に、離婚協議書か、できれば強制執行力のある離婚公正証書を作成しておけば、もしものときでも安心です。特に金銭のやりとりがある場合は、離婚公正証書が安心です。

調停離婚とは

調停離婚とは、話し合いでは合意できない場合に、夫婦の一方が申立人となって、家庭裁判所の仲介で離婚が成立する方法です。

調停委員が夫婦のお互いの言い分を聞いて、離婚条件の合意も含めて調整します。

調停なので強制ではなく、話し合いが決裂すれば不調となります。

調停離婚のメリット・デメリット

メリット

  • 調停委員が中立の立場で夫婦の言い分を聞いて調整してくれるので、感情的な対立を避けられる
  • 相手と顔を合わせずに話し合いができる
  • 民法が定める離婚事由を問われない
  • 条件面などの問題を公平に解決できる
  • 裁判よりも時間的・金銭的な負担が少ない
  • 非公開で行われるため、プライバシーが守られる
  • 調停が成立すると裁判の判決と同じ効力をもつ

デメリット

  • 調停は1か月に1回程度行われるので、成立するまで時間がかかる
  • 金銭的な取り決めは、相場をもとに進められる

調停離婚の流れ

  1. 離婚調停は、夫婦のどちらかが申立人となって、家庭裁判所に「夫婦関係調停の申立書」を提出します。
    離婚調停の手続き方法や必要書類の書き方などわからないことがある場合には、家庭裁判所内にある「家事相談コーナー」というところで教えてくれます。
  2. 家庭裁判所に離婚調停の申し立てが受理されると、数週間後、呼出状が夫婦それぞれのもとへ送られてきます。送付状には、調停を行う日時・場所が記載されています。
    どうしても指定日に行けない場合は、担当書記官に電話で相談するか、期日変更の申請をすれば、調停日の変更ができます。
    無断で欠席すると、5万円以下の過料に科せられることがあるので注意してください。
  3. 第1回の調停は、申請をしてから1ヶ月~1ヶ月半後に行われます。
  4. 調停は、家事審判官または家事調停官と2名以上の家事調停委員による調停委員会が担当し、通常は、男女1名ずつの調査委員が双方から言い分や希望を聞き取って調整します。
  5. 調停が行われるペースは、1ヶ月~1ヶ月半に1回の割合で、聞き取りは家庭裁判所にある調停室で個別に行われるので、夫婦が顔を合わせることはありません。
    調停では、夫婦関係が破綻した原因や経緯などを書面にしておいたり、証拠となるものを集めるなどしっかりと準備しておくことが大切です。
  6. 調停を重ねていくうちに、問題点が調整されてお互いが合意すれば、調停調書が作成されます。このときは、夫婦が一緒に調停室に入り、家事審判官の前で調停調書を確認し、調停が成立します。
    調停は一般的に4ヶ月~1年くらいかかるようです。

調停離婚成立後の手続き

  1. 調停調書が作成されれば、その時点で離婚調停が成立します。
  2. 調停調書は、裁判の確定判決と同じ効力があり、作成された内容が履行されない場合は強制執行できます。
    特に、金銭の支払いなどお金に関する事項が履行されない場合は、家庭裁判所から直接、支払い命令を出してもらえます。
    それでも相手が応じない場合は地方裁判所に申し立てれば、給料などを差し押さえることができます。
  3. もし超低調書の内容に異議があれば、その場で指摘して訂正してもらいます。
    承認した後では、変更してもらえませんので、内容が分からなかったり、記載漏れ、誤りなどがあれば、その場で伝えるようにしてください。
  4. 調停成立の日から10日以内に、原則として申立人が夫婦の本籍地又は申立人の所在地にある市区町村役場に調停調書の謄本を添付して離婚届を提出します。
    期限を過ぎると5万円以下の過料が科せられることがあるので注意してください。
  5. 調停証書には財産分与や慰謝料、養育費のことなどが書かれているので、第三者に見られたくない場合は、家庭裁判所に省略調書の交付を申請してください。
    これには届出に必要な調停離婚の成立と子どもの親権者だけが記載されています。

離婚調停で起こりやすいトラブル

相手が離婚調停に応じない

離婚調停では、当事者双方から話を聞くことが義務づけられています。

そのため、相手が出頭してこなければ、話を聞くことができないので、離婚調停は不成立となります。

ただし、無断で欠席することを認めているわけではなく、出頭勧告を出したり、家庭裁判所の調査官が相手方を訪問して説得したりします。

それでも応じなければ5万円以下の過料を科しますが、それ以上はどうしようもありません。

相手方が拒否している以上、離婚調停を取り下げるか、調停不成立として裁判離婚を検討することになります。

離婚調停中に財産を処分されそう

離婚調停中に相手が財産を処分したり、名義を変更したりする心配があれば、調停とは別に保全処分を申し立てましょう。

離婚調停中に夫婦の共有財産を守るには、強制執行力がない「調停前の仮の措置」と、強制執行力がある「調停・審判前の保全処分」があります。

相手に知られないように、離婚調停の申し立てと一緒に「調停前の仮の措置」または「調停・審判前の保全処分」の手続きをするとよいでしょう。

なお、保全処分には、担保として保証金の供託が必要で、対象となる財産の評価額の10%程度の費用がかかります。

調停調書の内容が守られない

調停証書には、法的効力がありますので、相手方が慰謝料や養育費などを催促しても支払わない場合は、家庭裁判所に相談して、必要な措置を取ってもらいましょう。

裁判所には、支払いを促す「履行勧告」、期限を決めて支払いを命じる「履行命令」、給料の差し押さえなどを行う「強制執行」の3段階の制度があります。

審判離婚とは

離婚調停で夫婦が合意しなければ、通常は調停不成立として終了しますが、離婚するのが望ましいと家庭裁判所が認めた場合に調停に代わる審判を下して離婚を言い渡すことがあります。これを「審判離婚」といいます。

この審判離婚はごくまれなケースです。

審判離婚は、申し立てのあった問題のほとんどが解決しているのに、慰謝料の金額だけが決まらない、病気などの理由で相手が出席できないなど、ごくわずかな理由で調停が成立しない場合に限られます。

審判離婚は、家庭裁判所が調停委員の意見を聞き、夫婦双方の申し立ての趣旨に反しない範囲で、その職権によって離婚を成立させようとするものです。

しかし、審判離婚は裁判の判決とは異なり、簡単に異議を唱えることができます。

審判後、2週間以内に夫婦どちらかが異議申立書を提出するだけで、審判の効力は失われます。

異議申し立ては理由を問われることもなく、家庭裁判所に出頭することもなく行うことができます。

しかし実際には、離婚成立まであと少しというところなので、審判に対して異議申し立てがされることは少ないようです。

2週間を過ぎても異議申し立てがされなければ、審判離婚が成立します。

その後の手続きは、調停離婚とほとんど同じで離婚届に必要書類を添付して役所に提出します。

審判離婚が下されるケース

  • 財産分与や慰謝料の額、親権者の指定など一部に意見の違いがある場合
  • 夫婦の感情的な反発が強い場合
  • 双方が審判を望んでいる場合
  • 早い結論が望ましい場合
  • 病気などの理由で一方が調停に出てこない場合
  • 一方が意図的に調停を引き伸ばしている場合
  • 一方が外国籍で自国に戻る場合

裁判離婚とは

調停が不成立に終わり、それでも離婚を望む場合、裁判所に訴えを起こして離婚することになります。

これを「裁判離婚」といいます。

協議・調停・審判でも離婚ができなかった場合に、夫婦の一方から家庭裁判所に離婚裁判を起こすことになりますが、この離婚裁判を起こすには民法に定める離婚原因(法定離婚原因)が必要です。

離婚裁判となると夫婦間の問題とはいっても法廷で争うことになるため、証拠調べや尋問などが行われ、判決が出されれば、どんなに内容に不満があったとしてもそれに従わなくてはなりません。

調停や審判は、特に法律の知識がなくても進めることができますが、離婚裁判になると、訴状の作成など法律の知識が必要ですので、弁護士の力が必要になるでしょう。

弁護士に依頼すれば、費用はかかりますが、客観的に争点を分析し、事実関係を証明できますし、弁護士は代理人として裁判に出席できますので、自分自身が法廷に出るのは必要最小限で済みます。

調停を申し立てた場合の費用は一律ですが、離婚裁判の場合は内容によって費用が加算されます。

裁判に勝つと、裁判費用は負けたほうの負担となるのが一般的ですが、この中に弁護士費用は含まれていません。

裁判離婚のメリット・デメリット

メリット

  • 必ず決着がつく
  • 判決に強制力がある
  • 和解離婚という案を提示してくれる

デメリット

  • 金銭的・時間的・精神的な負担がかかる
  • 時間・場所などを自由に選べない
  • たいてい弁護士が必要になるので、費用が高額になる
  • 民法に定められた離婚事由が必要
  • プライバシーが守られないことがある
  • 判決に納得できなくても従わなければならない

離婚裁判の流れ

  1. 管轄の家庭裁判所に訴状2通に必要書類を添えて提出します。
  2. 訴状が受理されると、裁判所から原告(訴えた側)と被告(訴えられた側)に、第1回期日を指定した呼出状が送達されます。相手はこのとき、訴えられたことを知ることになります。
  3. 被告へは、訴状の副本が同封され、定められた期日までに訴状に対する「答弁書」を作成し、裁判所と原告または原告の代理人に送るよう指示されます。
    答弁書には、訴状内容を認めるか認めないかの回答と、認めないときはその理由を記載します。
  4. 家庭裁判所が指定した第1回期日が来ると、審理が始まります。これを口頭弁論といいますが、初めの数回は、訴状や答弁書、事前に提出した準備書面、証拠品などをもとにそれぞれが主張を述べるだけなので、弁護士を代理人にした場合、当事者が出廷しなくても構いません。
  5. 争点が整理されたところで、裁判官から和解がすすめられます。この和解勧告は、裁判中に何度も行われますが、納得できなければ応じる必要はありません。
  6. 原告は、口頭弁論中に事実関係の説明、尋問、証拠品などで、主張の正当性と相手の責任を説明しなければなりません。もちろん、被告側は反論してきますし、場合によっては逆に離婚訴訟を起こしてくることもあります。これを「原告の本訴」に対して「反訴」といい、裁判所は2つの訴訟を同時に審理します。
    裁判は公開が原則ですが、離婚裁判ではプライバシーに配慮して、当事者尋問などの一部を非公開にできます。

離婚裁判にかかる費用

  • 手数料(印紙代)
    • 離婚請求のみ:13,000円
    • 財産分与の請求:1,200円
    • 養育費の請求:子ども1人につき1,200円
    • 慰謝料の請求:請求金額から算出
  • 書類郵送代:10,000円前後(余った分は返却される)
  • 証人への費用:日当、交通費など
  • 弁護士費用:着手金、報酬、実費など
  • 調査費用:証拠や情報収集のため調査会社などに依頼した場合

和解離婚とは

和解離婚とは、離婚裁判の途中で、裁判所から和解を勧められ、お互いが歩み寄って合意に達して離婚する方法です。

離婚裁判は家族内の争いという性質から、判決が出るまで争い続けるよりもお互いに歩み寄って合意するほうが望ましいという判断から、裁判官は訴訟の途中で和解勧告を出してきます。

和解勧告案にお互いが合意できたら、離婚が成立します。

和解が成立すると和解調書が作成され、これを離婚届と一緒に役所に提出すると離婚の手続きが完了します。

和解調書には判決と同様の法的効力があり、同意したら、不服を申し立てることができず、記載内容に違反したら、強制執行ができます。

認諾離婚とは

認諾離婚とは、離婚裁判の途中で、離婚を請求された被告(訴訟を起こされた側)が離婚を請求する原告(訴訟を起こした側)の請求を全面的に受け入れて離婚する方法です。

ただし、認諾離婚が認められるのは、原告の請求が離婚だけを目的とする場合に限られていて、子どもの親権者の指定や財産分与、慰謝料などの請求を伴う場合には適用されません。

そのため認諾離婚の成立はまれなケースです。

認諾離婚が成立すると認諾調書が作成され、これを離婚届に添付して役所に提出すると、離婚の手続きが完了します。

認諾調書には判決と同様の法的効力があり、同意したら、不服を申し立てることができず、記載内容に違反したら、強制執行ができます。

民法で定める離婚原因(法定離婚原因)

民法第770条

1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

第1号
配偶者に不貞な行為があったとき(浮気、不倫など配偶者以外の異性と性的関係をもつこと)

第2号
配偶者から悪意で遺棄されたとき(悪意をもって同居しなかったり、生活費を渡さなかったりすること)

第3号
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(失踪や家出などが原因で音信不通になり、3年以上、配偶者の生死が不明なこと)

第4号
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(回復の見込みのない精神疾患などを患い、夫婦の協力義務が果たせなくなること)

第5号
その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき(暴力、親族の不和などが原因で、夫婦関係が破綻していること )


2.裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

民法第770条第1項第1号の「配偶者の不貞行為」とは

夫婦は配偶者以外と性的関係をもってはいけないという義務があり、これを守らず、配偶者以外の人と性的関係をもつことが不貞行為にあたります。

不貞行為の境界線はあいまいな部分があり、過去の判例では、「配偶者以外の異性と自分の意志にもとづいて性的関係をもった場合」を基準としているようです。

不貞行為と認められる例
  • 浮気をしている明らかな証拠がある場合(浮気現場の写真、浮気相手からの電話・手紙・メールの記録など)
  • 出来心でも配偶者以外の人と肉体関係をもった場合
  • 偶発的に一度だけ肉体関係をもった場合
  • 風俗店に通い続けている場合
不貞行為と認められない例
  • 肉体関係はないが、特定の人に思いを寄せている場合
  • 食事をしているだけの場合
  • 疑わしいけど、証拠がない場合
  • 結婚前に付き合っていた人と今でも親しくしている場合
  • 別居後など夫婦関係がすでに破綻している場合

民法第770条第1項第2号の「配偶者による悪意の遺棄」とは

悪意の遺棄とは、法律用語で「どうなるかが分かっているのに義務を怠ること」を意味します。

民法による夫婦の主な義務は、一緒に住む「同居義務」、ともに協力して家庭を築く「協力義務」、配偶者を養い補助しなければならない「扶助義務」の3つがあります。

これらの義務に故意に違反して、相手に多大な苦痛を強いた場合、悪意の遺棄が問われます。

夫婦の形態はそれぞれ異なるため、悪意の遺棄に該当するかどうかは、個々のケースで判断することになります。

例えば、別居の理由が出稼ぎや単身赴任、子どもの学校の関係、夫の暴力、同居中の義母との不和などであれば、離婚の理由に該当しません。

愛人と同棲するために家を出て行った場合も、悪意の遺棄とまではいかず、「不貞行為や婚姻を継続しがたい重大な事由」とみなされます。

その他に、「実家に帰ったき長期間戻ってこない」、「生活費を渡さない」など、社会的に見ても相当ひどい行為が悪意の遺棄として離婚の理由に該当します。

民法第770条第1項第3号の「配偶者の3年以上の生死不明」とは

夫または妻が家を出たきり連絡が取れなくなった場合、最後に連絡を受けたときや最後に姿を見たとき、生存の情報を最後に聞いたときなど、その生存を証明する最後の事実があったときから3年経過しても生死がわからなければ、離婚調停を経ることなく、離婚訴訟を起こすことができます。

離婚原因を配偶者の3年以上の生死不明にする場合、相手の生存が本当に不明かどうかに気をつけなければなりません。

裁判では、生死不明を証明するために、捜索願の受理証明書や親族、友人、仕事関係者の陳述書などを提出しますが、そのときに「連絡があった」、「似た人を見た」といった話が出ると「行方不明」扱いになり、この離婚事由が認められなくなります。

「生死不明」と「行方不明」は違いますので、生存がわかっているときの離婚事由は、「悪意の遺棄」あるいは「婚姻を継続しがたい重大な事由」にしなければなりません。

失踪宣告と婚姻解消

配偶者の生死が7年以上わからない場合、失踪宣告制度を利用して婚姻関係を解消する方法もあります。

失踪宣告は、家庭裁判所に申し立てて審判を受けますが、これが認められると生死不明者は法律的に死亡したものとみなされます。

つまり、失踪宣告が認められると、残された妻や夫は遺族となり、遺産があれば相続が可能となります。

失踪宣告は離婚の方法ではないので、その後、本人の生存が確認され、失踪宣告が取り消されると婚姻関係は復活しますが、生きていることを知らないで再婚していた場合には、前の結婚(失踪者との結婚)は復活しないとされています。

民法第770条第1項第4号の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」とは

夫または妻が日常生活に支障をきたすほどの強度の精神疾患を長期間患い、なおかつ治る見込みがない場合、離婚裁判を起こすことができます。

ただし、病気は本人の責任ではないので、面倒な病気になった相手を切り捨てるような離婚を裁判所が積極的に認めているわけではありません。

治る見込みのない強度の精神疾患が離婚原因となるのは、病人をかかえた厳しい現実とすでに破綻している結婚生活があるからです。

単に不治の精神疾患にかかったというだけでなく、これまでの経緯や介護生活なども考慮して慎重に判断されます。

精神疾患を離婚原因とする場合、まずはどのような状態なのか、回復の見込みはどうなのかを明確にするため、専門医の意見書や診断書を提出する必要があります。

また、これまでの治療経過や入退院の回数・期間などについても説明します。

そのほかに、これまでどのような看護をしてきたか、離婚をしてもどのような治療を受けられるか、日常生活の面倒は誰が見るか、といったことについても離婚を左右する条件となります。

離婚原因となりうる病気の例
  • 統合失調症
  • そううつ病
  • 偏執病
  • 初老期精神疾患
  • 重度の身体障害
  • 認知症
  • アルツハイマー病
離婚原因と認められない病気の例
  • ノイローゼ
  • ヒステリー
  • 精神衰弱
  • アルコール依存症
  • 薬物依存症

民法第770条第1項第5号の「婚姻を継続しがたい重大な事由」とは

婚姻を継続しがたい重大な事由は、個々のケースで判断する必要があるときに用いられるものです。

離婚の原因は多種多様ですので、その原因に関しては、責任の有無よりは夫婦関係の破綻状態に重点を置いて、広く離婚請求に応じられるように、あいまいな表現になっています。

性格の不一致

夫婦で性格や価値観、生活習慣などが違うのは当然なので、裁判で離婚が認められるケースはまれです。

夫婦関係が破綻した具体的な事実を挙げて、問題の深刻さが認められるかがポイントです。

金銭問題

代表的なのが、ギャンブルや度を越した浪費グセ、それに伴う多額の借金などです。

生活を圧迫するほどの買い物やギャンブルにのめり込んでいたり、勝手に借金をしたりすれば、離婚の理由となります。

なお、「生活費を渡さない」、「働かない」などは、悪意の遺棄にあたる可能性があります。

親族問題

代表的なものは、配偶者の親族との不仲や親の介護です。

しかし離婚はあくまでも夫婦間の問題なので、この問題に対して配偶者がどのような態度でいるかが問われます。

宗教上の問題

信仰および宗教活動の自由は憲法で保障されているため、配偶者が信仰する宗教を問題にすることはできません。

しかし家族が犠牲になったり、日常生活に悪影響が出たりするほどの宗教活動があれば離婚理由となります。

暴行・虐待

夫婦の性生活が問題となるのは、常識の範囲を逸脱している性生活や相手が嫌がる異常な性行為です。

これらが認められれば離婚理由となります。

その他の問題

犯罪や度を越した趣味・嗜好など、離婚の原因は多岐にわたりますが、それによって夫婦関係が破綻し、修復が不可能だと認められれば、離婚の請求は認められます。

離婚後の戸籍

離婚すると夫婦の戸籍は別々になります。

厳密には、戸籍の筆頭者はそのままで配偶者はそこから籍を抜かれます。

戸籍の筆頭者は婚姻の際に氏を選んだ側がなっていますので、除籍されるのはほとんどが妻です。

戸籍の変更は、離婚届を役所が受理した時点で完了します。

調停離婚や裁判離婚でも離婚届が必要なのはそのためです。

除籍される側は、離婚する際に戸籍と姓をどうするかを決めることになりますが、戸籍は新しくつくることもできますし、婚姻前の戸籍に戻ることもできます。

姓も旧姓か婚姻時の姓を選ぶことができます。

戸籍を新しくつくる場合、所在地となる本籍が必要です。

本籍地は、現住所とは関係なく日本国内ならどこでも自由に選ぶことができますが、あまり遠いところだと戸籍謄本を取るときに面倒なので、そのあたりも考慮したほうがよいでしょう。

元の戸籍に戻る場合は、姓も旧姓に戻さなければなりません。

離婚後の姓(名字)

離婚届は原則として旧姓に戻ることを前提にしているので、婚姻時の姓を名乗り続ける場合は、離婚届とは別に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出する必要があります。

離婚後に旧姓に戻る場合には、離婚届にある「婚姻前の氏に戻る者の本籍」欄に選ぶ本籍を記入すれば、自動的に変更されます。

婚姻時の姓をそのまま使い続ける人がいますが、離婚成立後3か月以内なら、相手の同意や特別な理由なども必要なく、届出を行えば旧姓への変更ができます。

もし離婚成立から3ヶ月以上過ぎても、姓の変更をすることは可能ですが、この場合、氏の変更の家事審判を住所地の家庭裁判所に申し立てて許可を得なければなりません。

女性の再婚禁止期間

民法第733条では、女性は離婚日や婚姻の取消日から100日経過した後でなければ再婚できないと定めています。

しかし、離婚や婚姻の取り消しの時に妊娠していない場合や離婚や婚姻の取り消しの後に出産した場合には再婚できるとしています。

離婚日や婚姻の取消日から100日経過していない女性が再婚する場合は、婚姻届に証明書を添付する必要があります。

この証明書は、「再婚をしようとしている本人である女性を特定する事項」のほか、

  • 本人が離婚日又は婚姻の取消日であると申し出た日より後に妊娠していること
  • 離婚日又は婚姻の取消日以後の一定の時期において妊娠していないこと
  • 離婚日又は婚姻の取消日以後に出産したこと

のいずれかについて診断を行った医師が記載した書面をいいます。

「離婚日又は婚姻の取消日」の具体的な内容は、それぞれ次の通りです。

  • 協議離婚の場合、協議離婚の届出日(受理日)で、戸籍に「離婚日」として記載された日
  • 裁判離婚の場合、離婚の裁判の確定日で、戸籍に「離婚の裁判確定日」として記載された日
  • 調停離婚の場合、離婚調停の成立日で、戸籍に「調停成立日」と記載された日

子連れ再婚による問題

一般的には女性が再婚する際、再婚相手の戸籍に入ることになります。

ここで注意が必要なのが、子のいる女性が再婚するにあたって婚姻届を提出すると、再婚相手の戸籍に入るのは子からみれば母親であるその女性だけで、子は再婚前の母親の戸籍に残ったままとなります。

子を再婚後の母親と同じ戸籍に入れるには、再婚相手と子が養子縁組する必要があります。

養子縁組をすると法律上の親子関係が成立しますので、再婚相手は子の父親(養父)となります。

父親(養父)には扶養義務が生じ、子は父親(養父)の財産を相続する権利を持ちます。

離婚前の妊娠と離婚後300日以内の出産

民法772条

  1. 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
  2. 婚姻成立の日から200日を経過したあと、または婚姻の解消もしくは取り消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

離婚後に妊娠が判明し、生まれた子の父親が不在にならないようにするため、女性に再婚禁止期間を課すだけでなく、婚姻解消の日から300日以内に生まれた子の父親を前の夫と推定し、父親の戸籍(婚姻時の戸籍筆頭者)に入れることを民法722条で定めています。

この場合、親権は母親にありますが、父親は扶養義務を負うことになります。

子の父親が前の夫であれば、子にとっても母親にとっても保護になる規定ですが、実の父親が違う場合に問題となります。

現行の法律では、父親がだれであっても自動的に前の夫の子とみなされるため、離婚から6か月後に実の父親である男性と再婚しても、生まれた子の父親は前の夫となってしまいます。

そのため、出生届が出せなかったり、実の父親の名前を書いて受理されないといったことがあります。

実際に戸籍のない子がおり、これがいわゆる「300日問題」呼ばれています。

実の父親を認めてもらう方法

  • 親子関係不存在確認調停
    前の夫を相手に調停を申し立て、「自分の子どもではない」ことを認めてもらう方法。ただし、前の夫が非協力的な場合は申し立てができません。
  • 嫡出否認調停
    前の夫から、「自分の子どもではない」と嫡出否認の調停を申し立てる方法。申し立ては、子どもの出生を知ったときから1年以内にしなければなりません。
  • 離婚後の妊娠を証明
    妊娠が離婚後であることを医師の作成した「懐胎時期に関する証明書」によって証明する方法。ただし、離婚が妊娠前の場合は認められません。
  • 認知調停
    実の父親を相手に認知を求める方法。離婚前の妊娠でも、すでに別居していて前の夫が子の父親になりえないことを証明しなければなりません。

離婚後の子の姓と戸籍

両親が離婚しても、子の姓(名字)は変わりません。

したがって、子は両親が離婚しても両親が婚姻中に名乗っていた姓のままとなります。

そうなると、妻が婚姻中に夫の姓を名乗っていた場合、離婚によって妻が婚姻前の姓(旧姓)に戻ることを希望して元の戸籍に戻ったり、新しい戸籍を作って妻が親権者となっても、子はそのまま夫の戸籍に残ることになります。

このような場合、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」の申し立てをして許可されれば、子の姓を変更して母親と同じ姓にして、母親の戸籍に入れることができます。

この許可を得るための申し立ては、子の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行うことになっており、子が15歳以上の場合は本人が行います。

子が15歳未満の場合には、親権者となった親が行います。

家庭裁判所の許可が出ても自動的に姓や戸籍が変わるわけではなく、家庭裁判所の許可の審判書謄本を入籍届に添付して市区町村役場に提出する必要があります。

この届出も家庭裁判所への申し立てと同じく、子が15歳以上の場合には本人が行い、15歳未満の場合には親権者が行います。

子は同居した母親の戸籍に入籍した後でも、成人して再び父親の戸籍に戻りたいと希望すれば、18歳に達してから1年以内に市区町村役場に届出をすれば、元の戸籍に戻ることができます。

財産分与とは

財産分与とは、婚姻中に築き上げた共有の財産を公平に分けることです。

基本的には、結婚してから夫婦が所有していた実質上の共有財産が対象となります。

したがって、名義が夫婦共同でなくどちらか一方の収入だけで買ったとしても、それらはすべて共有財産とみなされます。

また、これらの財産は基本的には夫婦平等の権利があり、1/2ずつ分けますが、その財産における貢献度を考慮して分ける割合が変わります。

例えば、妻の不倫が原因で離婚にいたった場合、原因は妻にあるとしても財産分与の権利があります。

ただし、不倫という原因をつくったことで、妻は夫に対して慰謝料を支払う義務が生じます。

この慰謝料を別に請求する場合もありますが、財産分与の一部として計算する場合もあります。

つまり、仮に妻の財産分与の取り分と慰謝料が同じ金額だったら、これらは相殺されて妻の取り分はなくなりますが、財産を分けなかったということにはなりません

もし借金があれば、それも夫婦の財産で、財産分与の対象となります。

財産分与の対象

対象となる共有財産

  • 現金、預貯金
  • 土地、建物などの不動産
  • 各種保険
  • 自動車
  • 家財道具、電化製品
  • 株式、国債などの有価証券
  • 美術品、骨董品
  • 高価な貴金属、装飾品
  • 退職金、年金
  • 借金、住宅ローンなどの負債

対象とならない共有財産

  • 結婚前から所有していたもの(独身時代の預貯金、自動車、マンション、嫁入り道具など)
  • 結婚後に相続、贈与で得たもの(父母の財産、実家の不動産、配偶者からのプレゼントなど)
  • 結婚前の借金
  • 日常的に各自が専用に使うもの(衣類、バッグ、アクセサリー、スポーツ用品など)
  • 自分のものから得られた利益(親から相続した不動産の賃料、嫁入り道具を売却したお金など)
  • 別居後に取得したもの

財産分与の割合

財産分与の割合は、夫婦が合意すれば自由に決めることができますが、実際には裁判所の判例などを参考にするケースが一般的です。

この場合、寄与度といわれる貢献の度合いを評価対象のひとつとして割合を判断します。

寄与度は、財産の形成にどれだけ役に立ったかの指標で、最近は家事労働や内助の功に対する寄与度が高く評価され、専業主婦の場合でも50%の分与割合が認められるようになっています。

ただ、この基準がすべての専業主婦に当てはまるとは限りません。

家事を全くしなかった妻と、家事をこなしながらパートをして家計を助けた妻では当然割合が違ってきます。

このほかに、婚姻期間や職業による収入形態など、あらゆる事情が判断要素となります。

借金などのマイナスの財産も財産分与の対象となりますが、これが夫婦どちらかの遊びや買い物、ギャンブルなどのためにつくったものである場合は、結婚生活とは関係のないマイナスの特有財産とみなされるので、財産分与に含まれません。

配偶者の借金の連帯責任と連帯保証人

夫婦どちらかが借りたお金に対して、配偶者には連帯責任があり、返済の義務が民法で定められています。

しかし、離婚をすれば前の配偶者の債務を負う義務はありません。

ただし、借金をしたときに債権者(お金を貸す側)との間で連帯保証人になる旨の契約を交わしていた場合には問題となります。

この契約は離婚によって消滅することがないだけでなく、離婚を理由に解除することがほとんどできません。

そのため、離婚後に債権者から返済を要求されれば、本人に代わって返済しなければなりません。

連帯保証人は、債務者(お金を借りた側)と同じ立場で責任を負うことになります。

財産分与や慰謝料の支払いが遅れた場合の対処

財産分与や慰謝料の分割分、養育費などが決められて期日に支払われない場合、まずは電話やメールなどで催促し、それでも応じなければ、内容証明郵便で通知するのが一般的です。

これらの催促をしても支払いがなければ、法的な手段によることになりますが、離婚時の状況によって対処方法が違ってきます。

協議離婚で公正証書を作成していない場合

離婚の際、公正証書を作成していない場合、まずは家庭裁判所に財産分与や慰謝料、養育費請求の調停を申し立てます。

このとき離婚協議書などの文書があれば、速やかに調停は進むでしょう。

調停が不成立になれば自動的に審判に移行され、最終的に裁判官の審判が下されます。

協議離婚で公正証書を作成している場合

公正証書を作成している場合は、相手の支払いが滞ったら、相手方の住所地を管轄する地方裁判所に強制執行を申し立てることができます。

ただ、強制執行は相手に与える影響が大きいので、できることなら切り札として相手にプレッシャーを与え、自主的に支払ってもらうように仕向けるのがよい方法でしょう。

調停・審判、判決、和解による取り決めがある場合

家庭裁判所に履行勧告、履行命令を申し立てます。

それでも支払われない場合は、地方裁判所に強制執行を申し立てます。

履行勧告

調停や審判をした家庭裁判所に申し出るだけで、相手方の支払い状況などを調べ、支払いの指導や説得を行ってくれる制度です。

法的な強制力はありませんが、家庭裁判所からの電話や文書が心理的プレッシャーを与え、一定の効果が期待できます。

履行命令

履行勧告と同様に、家庭裁判所に申し出ることで、一定の期間を定めて支払いを命じてくれる制度です。

正当な理由もなく命令に従わなかったら、10万円以下の過料を科すことで間接的に強制します。

しかし支払い自体の法的強制力はありません。

強制執行

相手方の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てることで、相手の給料や預貯金などを差し押さえて、その中から強制的に取り立てる制度です。

申し立てには、調停調書や審判書などの書類や印紙代が必要です。

慰謝料とは

慰謝料とは、相手の行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償のことをいいます。

財産分与とは異なり、離婚をする際に必ず請求できるものではありません。

離婚の慰謝料は、一般的に結婚生活の中で相手が浮気をしたとか、暴力を振るったなどの不法行為があり、相手の責任が明らかな場合に請求することができます。

このとき、証拠となる写真や音声があると話し合いを有利に進められます。

離婚の慰謝料には、相手の不貞行為、悪意の遺棄、暴力など、法律で定められた離婚事由に相当する不法行為によってこうむった精神的苦痛に対する「離婚原因慰謝料」と、離婚させられることによる精神的苦痛に対する「離婚自体慰謝料」があります。

「離婚自体慰謝料」のケースは、例えば夫婦仲良く円満な結婚生活を送っていると信じていたところに離婚を切り出され、理由もわからず離婚を受け入れるしかなかった場合の精神的苦痛に対して慰謝料を請求するものです。

慰謝料の請求が認められる場合

  • 相手の不貞行為(浮気、不倫)
  • 悪意の遺棄(同居の拒否など)
  • 身体的・精神的な暴力行為
  • 生活費の不払い
  • ギャンブルなどの浪費癖
  • 度を越した飲酒癖
  • 性行為の拒否・強要・不能
  • 相手からの一方的な離婚の申し入れ

慰謝料の請求が認められない場合

  • 性格の不一致
  • 強度の精神的疾患
  • 有責行為が双方に同程度ある場合
  • 信仰上の対立
  • 相手の親族との不和
  • 有責行為がない場合
  • すでに夫婦関係が破綻している場合
  • 財産分与の一部などですでに損害が補填されている場合(場合によっては認められる)

慰謝料の相場

慰謝料の金額には決まりがなく、夫婦双方が納得すれば、それが請求額となります。

慰謝料の算定方法や算定基準は明確ではないので、自分が受けた苦痛の程度や期間を中心に、相手の責任や悪意、離婚理由の大きさなど、さまざまな要素を金額に換算して出すことになります。

慰謝料に規定がないとはいっても、それなりの相場がありますので、法外な慰謝料を請求すれば、話し合いが進まなくなることもありますので、折り合いをつけることが大切です。

夫婦間で慰謝料の金額について話し合っても結論が出ない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てましょう。その際、財産分与なども一緒に依頼すると、総合的に調整してくれます。

慰謝料の請求権には時効があり、離婚成立から3年となっていますので、離婚後に慰謝料が請求できるとわかったら、その期間が過ぎる前に直接請求するか、家庭裁判所に調停を申し立てるか、簡易裁判所または地方裁判所に訴訟を起こす必要があります。

慰謝料の目安

  • 浮気・不倫 100万円~500万円
  • 悪意の遺棄(同居の拒否など) 50万円~300万円
  • 暴力 50万円~500万円
  • 性行為の拒否 0~100万円
  • 突然離婚を言い出された場合 0~100万円

慰謝料の金額を決める要素

  • 苦痛の程度・期間・回数
  • 結婚期間
  • 有責配偶者の性別・年齢
  • 有責配偶者の経済状況・支払い能力
  • 責任の大きさ
  • 有責配偶者の悪意
  • 有責配偶者の社会的地位
  • 子どもの有無

浮気相手への慰謝料請求

離婚の原因が浮気の場合、配偶者だけでなくその浮気相手にも慰謝料を請求できる場合があります。

それは、その浮気相手が配偶者を既婚者と知っていた上で関係を持ったときです。

夫婦には貞操を守る義務があるので、既婚者と性的関係を持つ行為は夫婦間の貞操を守る義務を一緒に犯すことと見なされるからです。

しかし、浮気相手が配偶者を既婚者と知らなかった場合や、離婚寸前という相手の言葉を信じたなどの場合は、浮気相手に不法性は認められないとして、責任は問われなくなります。

浮気や不倫が発覚したが、離婚には至らなかった場合でも相手に慰謝料を請求することができます。

ただし、不貞行為を知ったときから3年で時効となります。

浮気相手に慰謝料を請求する場合、まずは相手と話をする必要がありますが、相手の顔を見たくないと思うこともありますので、書面を内容証明郵便にして送るという方法もあります。

相手が交渉に応じて慰謝料の支払いを承諾したら、金額と支払い方法を定めて示談書などに残します。

分割払いにするときは、公正証書にしておくと安心です。

交渉が決裂した場合は、裁判所に調停を申し立てるか、裁判を起こすことになります。

第三者への慰謝料請求の訴えは、家庭裁判所ではなく、相手の住所地を管轄する簡易裁判所または地方裁判所となります。

もし裁判を起こすのであれば、慰謝料請求の正当性を証明するための証拠をそろえる必要があります。

離婚後の生活援助

夫婦の一方に離婚後の経済的な不安がある場合、収入の多いほうから少ないほうへ財産分与の名目で離婚後の生活を援助することがあります。

これを「扶養的財産分与」や「離婚後扶養」といいます。

通常、専業主婦であった妻が離婚したからといって、すぐに経済的に自立するのは難しかったり、小さな子どもを引き取った場合や、高齢、病気などの理由で離婚後の扶養が必要なことがあります。

扶養的財産分与は、補充的なもので、その方法や金額、期間などの基準はありません。

法的にもはっきりとして規定はなく、請求する側の年齢や職業的な技術の有無、請求される側の経済力などによっても違ってきます。

一般的には、財産分与の取り分を増やしたり、慰謝料に上乗せするといった方法が多いようですが、毎月定額を送金するといった方法もあります。

扶養的財産分与が認められないケース

どのような場合でも必ず扶養的財産分与が認められるとは限りません。

たとえ就職できないとしても、実家に経済力があったり、生活を維持できるくらいの財産分与や慰謝料をもらっているなら、援助は必要ないからです。

また、支払う方の経済力も問題で、現実的に支払うだけの収入や資産がなければ、扶養的財産分与を負う必要はありません。

離婚による年金分割

年金分割制度は、婚姻期間中の年金保険料納付記録を夫婦間で分割することができる制度です。

離婚しても相手方のすべての年金の半分がもらえるというわけではなく、分割の対象になるのは、厚生年金または共済年金にあたる部分のみです。

基礎年金である国民年金に相当する部分や厚生年金基金、国民年金基金に相当する部分は分割の対象となりません。したがって、もし夫が自営業者等で国民年金にしか加入しておらず、妻が厚生年金にも加入しているとすれば、妻の年金が分割請求されることになってしまいます。

また、年金分割を受けたとしても、自分自身の保険料納付済期間・保険料免除期間・合算対象期間の合計が受給資格期間を満たしていないと年金が支給されませんので、注意が必要です。

年金分割の制度には、「合意分割」と「3号分割」があります。

合意分割とは

婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)の分割を夫婦間での合意または裁判所における手続きによって最大2分の1を限度に自由に決められるというものです。

対象期間は、平成19年4月1日以降に成立した離婚ですが、分割される期間は過去にさかのぼったすべての婚姻期間が対象となります。

分割請求期限は、離婚した日の翌日から2年以内です。

3号分割とは

平成20年5月1日以降に成立した離婚が対象で、平成20年4月1日から離婚が成立するまでの第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者であって、20才以上60才未満の者)であった期間についてのみ、自動的に年金保険料納付記録を2分の1ずつに分割する制度です。

夫婦間の合意がなくても、請求により2分の1に分割することができます。

分割請求期限は、離婚した日の翌日から2年以内です。

共働きの場合

夫の標準報酬額が妻の標準報酬額より多いときは、夫の年金を分割することができます。

逆に、妻の標準報酬額が夫の標準報酬額より多いときには、妻の年金を分割することになります。

これらの場合は合意分割のみの適用となります。

年金分割の手続き方法

年金分割の手続きは離婚が成立した後でなければできません。

原則として当事者双方が一緒に年金事務所に行き、手続きを行います。

必要書類は以下の通りです。

  • 年金分割の合意書
  • 双方の戸籍謄本
  • 双方の年金手帳

年金分割の手続きは委任状があれば代理人でも可能ですが、その場合でも双方の代理人または当事者と代理人というように必ず2人で行く必要があります。

そのほかに公正証書または公証人の認証を受けた証書がある場合は、「年金分割の合意書」に代えてこれらの証書を添付すれば、当事者の一方だけで手続きすることができます。

調停、審判又は裁判で年金の按分割合が決定された場合は、当事者のどちらか一方が年金事務所に行って手続きを行うことができます。

その際に必要な書類は、以下の通りです。

  • 調停等で決定された謄本
  • 双方の戸籍謄本
  • 年金手帳

離婚公正証書作成に必要な書類

当事者が公証役場へ出頭する場合

  • 婚姻関係・親子関係を確認するための戸籍謄本
  • 本人であることを証明する下記のいずれかの書類
    • 運転免許証、パスポート等及び認印
    • 実印及び印鑑証明書(3か月以内に発行されたもの)
  • 登記簿謄本(目的物が不動産である場合)
  • 固定資産評価証明書または納税通知書(目的物が不動産である場合)

代理人が公証役場へ出頭する場合

  • 婚姻関係・親子関係を確認するための戸籍謄本
  • 委任者本人の実印が押捺された委任状及び印鑑証明書(3か月以内に発行されたもの)
  • 出頭者が委任状に記載された代理人その人であることを証明する下記のいずれかの書類
    • 運転免許証、パスポート等
    • 実印及び印鑑登録証明書1通(3か月以内に発行されたもの)
  • 登記簿謄本(目的物が不動産である場合)
  • 固定資産評価証明書または納税通知書(目的物が不動産である場合)

代理人が出頭する場合の注意事項

  • 1人で双方の代理人になることはできません。
  • 当事者の一方は相手方の代理人になることはできません。
  • 成人の子は親のどちらかの代理人になることができます。
  • 公証役場によっては、代理人による作成を認めていないところもありますので、事前に確認が必要です。

公証役場手数料の計算方法

公証役場手数料算定表

財産の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円超
200万円以下
7,000円
200万円超
500万円以下
11,000円
500万円超
1,000万円以下
17,000円
1,000万円超
3,000万円以下
23,000円
3,000万円超
5,000万円以下
29,000円
5,000万円超
1億円以下
43,000円
1億円超
3億円以下
43,000円に5,000万円までごとに13,000円を加算
3億円超
10億円以下
95,000円に5,000万円までごとに11,000円を加算
10億円超 24万9,000円に5,000万円までごとに8,000円を加算
  • 証書の枚数が4枚(横書の場合は3枚)を超える場合、超える1枚ごとに250円が加算されます。
  • 年金分割条項を入れる場合は、11,000円加算されます。

離婚公正証書の計算方法

  • 慰謝料と財産分与は、合算して手数料を計算します。
  • 財産分与として不動産が対象になる場合は、その不動産の評価額により手数料を計算します。
  • 養育費は支払い年数に応じて計算し、支払い年数が10年を超えるときは、10年として計算します。
  • 養育料は子供の数に関わらず、その合計額が手数料計算の基礎となります。

手数料の例①

子ども:1人(5歳)
養育費:月額3万円(支払い期間20歳まで)
財産分与:500万円
慰謝料:100万円

養育費:3万円×12ヶ月×10年=360万円(手数料 11,000円)
財産分与と慰謝料:500万円+100万円=600万円(手数料 17,000円)
11,000円+17,000円=28,000円

この他、証書の枚数によって手数料が加算されます。

手数料の例②

子ども:2人(5歳と7歳)
養育費:1人月額3万円(支払い期間20歳まで)
財産分与:300万円
慰謝料:なし

養育費:3万円×2人×12ヶ月×10年=720万円(手数料 17,000円)
財産分与:300万円(手数料 17,000円)
17,000円+11,000円=28,000円

この他、証書の枚数によって手数料が加算されます。

手数料の例③

子ども:3人(7歳と9歳と12歳)
養育費:1人月額3万円(支払い期間20歳まで)
財産分与:なし
慰謝料:なし

養育費:(7歳と9歳の子ども)3万円×2人×12ヶ月×10年=720万円
3万円×12ヶ月×8年=288万円(12歳の子ども)
720万円+288万円=1,008万円(手数料 23,000円)

この他、証書の枚数によって手数料が加算されます。

公証証書による強制執行手続き

養育費などの支払いが滞った場合に公正証書による強制執行を行うには、「送達」と「執行文付与」という2つの手続きが必要です。

送達とは

「送達」とは、債務者に公正証書を渡し、その内容を知り得る状態にしておくことをいいます。送達には、「交付送達」と「特別送達」があります。

「交付送達」とは、債務者(養育費等の支払い義務者)本人が公正証書作成のために公証役場へ出頭した際、公証人が直接、債務者に公正証書の謄本(写し)を手渡しすることによって送達を完了させるものです。

一方、「特別送達」とは、公証役場から公証人の名前で債務者宛に公正証書の謄本を郵送することによって送達を完了させるものです。特別送達は、公証人によって行わなければならず、当事者同士で郵送をしても効力はありません。

送達が完了すると、債権者に「送達証明書」が発行されます。強制執行を行うには、この「送達証明書」が必要になります。

送達にかかる費用には次のとおりです。

  • 送達手数料 1件1,400円
  • 送達証明書 1通250円
  • 送料実費

送達は、公正証書作成と同時に行うほうがよいでしょう。支払いが滞ってから送達する場合だと、強制執行まで時間がかかるだけでなく、相手方の所在地がわからなくなって送達ができない恐れがあります。

強制執行の手続きは、債務者の住所地を管轄する地方裁判所で行います。

執行文付与とは

「執行文付与」とは、公証人が債権者が持つ公正証書の正本に強制執行ができるということを証明するものです。執行文付与の手数料は、1,700円です。

執行文付与の手続き方法

  • 公正証書の正本を持っている債権者が、公正証書を作成した公証役場に出向き、執行文の付与を請求します。郵便による請求も可能です。
  • 公証人が執行文を付与しても差し支えないと判断したときは、公正証書の正本の末尾に、「甲が乙に対しこの証書により強制執行できる。」旨の文言を記入して、債権者に返却します。
  • 管轄が異なる複数の不動産に強制執行する場合は、執行機関の数だけ執行文の付与を受ける必要があります。

執行文付与の必要書類

  • 執行文付与申立書
  • 強制執行認諾条項付きの公正証書正本
  • 本人確認資料(マイナンバーカード、運転免許証等の顔写真付きの身分証、又は実印及び発行後3ヵ月以内の印鑑登録証明書)
  • 返信先を記載したレターパックプラス又書留郵便用の切手を貼付した返送用封筒(郵便よる場合。返信先の宛名は申立人又は代理人の住所地を記載、かつ本人確認資料記載の住所地と一致していること)
  • 戸籍謄本(離婚公正証書作成時と名前が変わっている場合)
  • 住民票(離婚公正証書作成時と住所が変わっている場合)

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